月物語 ~黒き者たちの宴~
それは驚きだ。
「わざわざ?
王がどうしてそんな遠くまで足を運んだのかしら?」
「正当な値段で購入するため、です。」
なるほど。
「鉱山だけではありませんが、下働きの者は安い賃金で働かされ、雇い主もまた行商人に安く買いたたかれ、そうした悪循環で世の中は成っております。
雉院様は我々の雇い主から、正当な金額で金を買って行かれたのです。」
やはり、雉院は思っていたほど悪くない。
王様より、商人としての才があったのかもしれない。
「我々の雇い主は、その気持ちにせめてものお礼と、陽春を差し出しました。
美しいものがお好きなのは、有名な話でしたから…」
楽しそうに茶を入れる陽春に優しい眼差しを向ける。
確かに彼の容姿は優れている。