月物語 ~黒き者たちの宴~


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月が天中から下る頃―――。



赤殿の最奥、彩夏と劉向は卓をはさんで頭を悩ませていた。



「彩夏殿、よもやそなたまで…
いやはや、主上もなかなかに鋭い。」



劉向は頭を抱えつつも、半ば感心していた。



確かに、礼は彩夏との距離を測りつつある。



誰彼もを信じ切って、心の内を話すことはしない。



初めからその気のない娘だった。



それが如何に危険か、だが、それなくしては相手の内に入り込めないかを知っている。



しかし、なぜ彩夏と距離を置き始めたのかがさっぱりわからなかった。


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