月物語 ~黒き者たちの宴~
初めは、彩夏だけだった。
だから、劉向は油断した。
雉院はあらゆる手を使って接触してくるだろうが、さして障害はないと思った。
東苑が上手くやってくれる。
侍女の光燐もいる。
彩夏に言えないことは劉向に、二人に言えないことは東苑に、三人に言えないことは光燐に。
それで王の情報はすべて掴んだも同然だった。
しかし、予想外にも主上は雉院に興味を示し、早々に花も受け入れた。
直感がそうさせているのか、人選の偏りを避けている。