月物語 ~黒き者たちの宴~
微妙に順位をずらし始めた。
少しずつ、少しずつ。
ふと、彩夏は礼に泣きつかれたことを思い出した。
「もしかしたら、私たちにない情報の中に、飛燕のものがあるかと。」
劉向は顎を撫でる。
「ふむ、身内であることを逆手に取られたか。
だが、おそらく私はもう駄目じゃろう。
あとはそなたに頑張ってもらうしかないか。
こちら側をこれ以上軽くするわけにはいくまいし。
それにしても、陽春の手は上手かった。」
「そうですね。
主上も陽春を進んで連れ立っているようですし。」
「あぁ…。
主上自身も、気づいておらぬやもしれぬ。」
劉向の脳内を、昔の光景が過ぎった。
また、繰り返されるのであろうか。
陽春を連れ立って歩く礼は、似ている。
気高く強い、愛しい人と。
だからこそ、劉向は自分の仕事を全うしなければならない。
誰と臨むことになっても。