月物語 ~黒き者たちの宴~
6章 堅如磐石 ~王宮事件勃発篇~
―1―
獅子は、斜めにした椅子をかたかた揺らしていた。
扉の前に、気配がある。
「開いてまっすよー。」
来訪者は驚きもせずに、そのまま部屋に入った。
獅子は、来訪者、劉向の姿を見て眉を寄せた。
「おい、じじい。
あんま無理すんなっていったろ?
東苑みたいにふらっとして、面倒事は俺たちに任せとけばいいんだよ。」
会うなり、そんな軽口をたたく獅子を、劉向はくわっと一喝した。
「何を言う、若造が!」
「息子もいるんだしよー。
もうちょっと身体いたわれよ。」
一人で来たところを見ると、どうやら息子を巻いてきたらしい。
二人は密やかに、清罪宮の離れで会っていた。