月物語 ~黒き者たちの宴~
少し遠くに森が見えた。
「なっなに?」
わけもわからず走り出す。
寝起きのせいか、足が縺れる。
走りながら後ろを振り返った。
黒い染みが近付いているのが見える。
背中に感じたこともない感覚がビンビン伝わってくる。
―自分を狙っているに違いないわ。
だってここは、私の世界だから。
鰯が前を走って誘導する。
それを無我夢中で追いかけた。
「急げ。」
草で足を切った気がした。
それに何だか痒みも感じたが、そのまま走り続けた。