月物語 ~黒き者たちの宴~



再び手を振り上げても、陽春は目を反らさなかった。



「どうぞ、お気のすむまで。」



そう言った陽春の目は、真の闇に閉ざされていた。



いつもと違う。



それは、事件とは関係ない。



彼自信が、闇に紛れていく。



「どうした?」



礼は、陽春の叩いた頬にそっと触れた。



平手をした痕が赤くなっている。



陽春の瞳が揺れた。




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