月物語 ~黒き者たちの宴~
『あなたの思うがままに…』
飛燕の声が優しく脳内に響いた。
人がいる時に出てくるのは初めてだ。
しかしながら、陽春には聞こえていないようだ。
―でも…
『私はあなた。
だから大丈夫。』
飛燕には、礼の想いが伝わっていた。
『それに、私の願いも半分叶うから。』
願いとは何だろう。
陽春がいるから聞けないが、そんなことはどうでもよかった。
今から礼は、王になる。
陽春を利用するのだ。
もはや、この気持ちを整理する術はない。
「今日で、『まだ』を終わりにしましょ。」
陽春は悲哀に満ちた微笑みで頷いた。