月物語 ~黒き者たちの宴~
森は近そうで意外と距離があった。
呼吸が乱れ始める。
その理由は、森が近づくにつれてわかった。
森は屋久杉のようなとてつもない大きさの大樹で成っていた。
近づいているはずの自分が、飲み込まれるような錯覚に陥る。
何百年、いや何千年という時を過ごしたに違いない森だ。
礼と鰯は森に突っ込んだ。
瞬間、後ろで壁にぶつかるような音がした。
―ギァィィイ!
気味の悪い声が轟く。
鰯が止まったので、礼が振り返ると、十羽ほどの烏が地面に転がっていた。
「…ハァ、…ハァ…。
また…烏?」
鰯は烏から礼に視線を移した。