月物語 ~黒き者たちの宴~
彩夏が光燐を巻き込みたくないように、彼もまた東苑を守りたかった。
けれど、一番守らなくてはならないものは違う。
「光燐。
今からあなたはこの件には外れてもらうわ。」
光燐は、はっとなる。
「待ってください。
私だって命くらい―――」
「だめよ!」
彩夏は、浮かんでくる飛燕をかき消す。
「簡単に、手放しては駄目。」
光燐は、その意味がわかった。
もう、これ以上言えることはない。
「主上をよろしく。」