月物語 ~黒き者たちの宴~
「…ハァ…これって…ハア…結界…?」
礼の問いに鰯は一歩引いた。
「お前さん、いったい何者じゃ?」
鰯の目が鋭く光を反射した。
「何故、結界のことを知っておる。それに…」
―何故わしを見て驚かなかった。
この場所がどこであるか聞かなかった。
疑問は多々あったが、礼を刺激しないよう呑み込んだ。
どう考えてもおかしい。
礼はこめかみに人差し指を当てて、暫し考える。
何と説明すればよいかわからない。