月物語 ~黒き者たちの宴~
東苑は清罪宮の離れに入って行った。
衛兵がいないところを見ると、どうやら抜け道らしい。
光燐も怪訝な顔つきだ。
中には獅子もいるはず。
一体誰と会っているのだろう。
「主上、もう二刻になります。
そろそろ、帰りませんと、騒ぎになるかと。」
確かにそろそろ限界だ。
事件の後だから、礼がいなければ大騒ぎになる。
「どうされました主上。
こんなところで。」
礼と光燐の心臓は、口から飛び出そうになった。
いつの間にか、衛兵がいた。
「あっちょっと迷子…なんちゃって。
あはは。」
光燐も固まっている。
―何とか誤魔化されてくれ!
「ここは入り組んでいますから、いつの間にかこんなところまで来てしまったのですね。」
あっさり納得した衛兵に連れられて、部屋に戻ったのだった。