月物語 ~黒き者たちの宴~



いつから溢れていたのかわからないが、ぽたりぽたりと机に染みを作っていた。



三人の目は、彩夏の雫をただ眺めた。



「夫も、娘も、…そしてあんたも。
皆駒になる必要なんてね―。」



「女性は、いくつになっても守られていればよいのですよ。
特に、あなたみたいな心の美しい女性は。」



「なーにいってんだ?
彩夏は外見も美人だろ?
俺は、まだいける。」



二人の冷たい目が獅子に突き刺さる。



「…お気づかい、…あっ、ありがとう、ございます。
けど―――」



彩夏は泣き顔で微笑んだ。



「私は、娘を、守りたい。」



彩夏に感服した男たちであった。



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