月物語 ~黒き者たちの宴~
「絶対に手に入らないものを追いかけて。
一番傍にいるのは自分なのにと、欲を殺して。」
男の言葉は、すっと心に流れ込んできた。
―兄は、悲しんでくれるのだろうか。
そんなことを考えながら、男は目を閉じた。
男が次に目覚めたとき、まだ暗闇の中だったので、魂がこの世を彷徨っているのだと思った。
「目覚めたか。」
暗闇から声が聞こえた。
―天の声?
「目覚めたのか?
大丈夫か?」
透き通るような静かな声が木霊する。