月物語 ~黒き者たちの宴~



「この後に及んでまだ目を背けるか?」



男の様子がわからないことが、祝融をいくらかましにさせた。



それは、祝融自身に投げかけるべき言葉だったから。



「そなたは知っているはずだ。
すべてを。」



祝融は、なぜ“あの男”が彼を助けたのかわからなかった。



それは、もっとも愛する人を裏切ることになるのに。



「あと、ひと月。
そなたの命は保証する。
王が来るまで生きながらえろ。」



祝融はそう言ったが、実際のところ一か月持つのかわからなかった。



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