月物語 ~黒き者たちの宴~


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宋春が案内した抜け道は、あまり知られていないらしい。



殆ど誰とも会わなかった。



数人の兵は、宋春の見事な体術で気絶させられていった。



「雉院。」



礼が駆けこんだ雉院の部屋には、甘い香りが漂っていた。



雉院は妖艶な笑みを浮かべている。



直感が、危険信号を発しているが、引くわけにはいかなかった。



―全ての、黒幕。
けれど、なぜ?



宋春の行動は、全て雉院がやったことだと示すようなものだ。



気付かれない方法など、いくらでもあったはず。



殺す機会も。



「宋春、待ちくたびれたぞ。」



「少し兵が多くて。」




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