月物語 ~黒き者たちの宴~
長い回廊を走って来たせいか、礼は毒だろうが一気に飲み干す。
喉を鳴って、液体が身体を巡った。
一息ついて、雉院を睨む。
雉院が優雅に近づき、礼の顎をくっと上げた。
「別に殺しはせぬ。
身体はな。
ふふふ」
「身体は?」
礼は、雉院の手を払いのける。
「やはり、あなたは――――」
話しながら、礼は床に手をついた。
―何だ?
床がぐらぐら回りだした。
いや、回っているのは自分の目だ。
力が入らない。
身体も火照ってきた。