月物語 ~黒き者たちの宴~



―暖かい。
額も、何だか熱い…



熱い?



「うわぁあ!」



礼は、大木から飛び退いた。



「なんじゃ。虫でもおったか?」



鰯が呆れ顔で問う。



「おでこが、あっ熱い。
何か噛まれたかも?」



礼は鰯のところへすっ飛んで、揃った前髪をぺらっとめくった。



呆れながらも礼の額を診る。



「…なっ…」



予想外の光景に、鰯は口をパクパクさせながら固まった。



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