月物語 ~黒き者たちの宴~



「天の気まぐれよ。
そなたが『星明の国』から来ると聞いた時は、さすがに驚いたが。
本当に“あ奴”の言うとおりになったわ。
我は手に入れるぞ。
欲しいものは全部。
そうじゃ!
最後にいいことを教えてやろう。
陽春は、そちが殺したのじゃ。」



―――えっ?



「そなたを殺す役目を、陽春は担っていた。
じゃが、陽春は命に逆らった。
本気で、そなたを愛したようじゃ。
ほっほっほ」



―――陽、春…



自分は、今泣いているのだろうか。



「そなたをたった五日、生きながらへさせるために、あやつは自ら命を絶った。
本に美しい、美しいのう。」



視界が滲む。



遠くで誰かが呼んでいるような気がしたが、そんなことはどうでもよかった。



意識がどんどん遠退いていく。



もう、そのまま永遠の眠りについてしまえばいい。



そう思って目を閉じた。



< 291 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop