月物語 ~黒き者たちの宴~



そのころ、扉の外には兵を引き連れた獅子と杜凛周がやって来ていた。



獅子が棍棒で扉をぶち壊す。



壁ごと粉々になってぽっかり穴が開いた。



部屋から甘い香りが一気に流れ出る。



彩夏たちは急いで中に入った。



中には何事もなかったかのように礼が立っている。



床には雉院の身体が転がっていた。



「こりゃ一体どういうことだ?」



獅子が茫然と呟いた。



「雉院が倒れた。
誰か医者を。
もう手遅れかもしれないが。」



礼は言った。



兵たちも、部屋の様子に拍子抜けしている。



獅子など戦闘態勢のままだ。



「主上、お怪我はありませんか。」



すっと進み出た彩夏は、礼を抱き寄せた。



「あぁ。」



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