月物語 ~黒き者たちの宴~
「なっ、ななな、なぜこんなところに………。
王とはつい知らず、大変失礼をいたしました。
この鰯、一生の不覚。
何卒、何卒、ご容赦くださいませ!」
鰯は、突然平伏した。
いや、これは平服なのだろうか。
猫だけにわからない。
礼は何事だろうと思ったが、鰯が下げる頭が礼の方へ向いていることだけはわかった。
「おっ、王ってあたし?」
平伏したままの鰯が「ははぁ。」っとさらに地面に顎をこすりつけた。
礼は、口角をあげて笑う。
―あぁ、やっぱりここが私の世界。
礼は一人で納得した。
「ねぇ鰯。
王様って、何の王様?
どこの?
さっきの烏についても、もっと教えてよ。
それから、お願いだから顔を上げて。
話し辛い。」
礼が困ったように言うと、鰯はそろそろと説明し始めた。