月物語 ~黒き者たちの宴~



『死んでくれ』



最後に朱雀はそう言った。



礼にはそれですべてが繋がった。



ふと、手に温もりを感じた。



そちらに顔を向けると、暫く見ていなかった母がいた。



礼が目覚めたことには気づいていない。



母の手に触れたのは、いつ以来だろう。



こんなにガサガサの赤切れだらけの手だっただろうか。



きっと心配したに違いない。



あれから何日が経って、母は何日こうしていたことか。



そんな母の姿を見ても、礼は何の感慨も浮かばなかった。


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