月物語 ~黒き者たちの宴~
どこにいても、他人に理解されないし、してこなかった。
“自分は他人とは違う”
そう思い込んでいた。
だからこそ、“本当の自分”をさらけ出すのは怖かったし、馬鹿馬鹿しいと思っていた。
特別じゃない人間に、特別な自分のことが理解できるはずはない。
そう言い聞かせて、ずっとずっと逃げてきた。
他者とは深くかかわらず、“本当の自分”を見せず、ただ他者の世界を傍観視していた。
そんな自分がいなくなっても、またすぐにいつもの日常に戻る。
そう考えるのは、そう願っているからなのかもしれない。
母を起こさないよう、反対の左手で首元に触れた。
―自分が邪魔をしなければいい。
朱雀に渡された小瓶が、肌と同じ温度になっていた。