月物語 ~黒き者たちの宴~



「違わないさ。
人に慕われる弟が目障りだった。」



「違う」



「王が弟を気に入ることを恐れた。
地位が脅かされるのでは、と。」



「だが、弟は、生きている。
お前の負けだ。」



劉巾が冷めた声を転がした。



「兄、上…」



計画していた結末は、遠く離れてしまった。



違うといったのは、自分のため。



いつまでも兄でいるために。



雉院とは、禁牢を覗かないことを約束していた。



けれど、死体の出ない弟に、事実をつきとめようとついに入ってしまった。




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