月物語 ~黒き者たちの宴~



幕引きは、これでよかった。



あれから、弟の背中を見送った日から、ずっと彼の好きだったお茶を飲んだ。



酒好きの自分が変だと思いつつも、それがなぜだか考えるのが嫌で、延ばし延ばしにここまでやってきた。



新月。



雉院が、頻りにその日を気にしていたから、きっとこの日に何かあると知っていた。



そして、待っていた。



この日を、迷いのある自分と決別の日にしようと、そう心に決めて。



雉院じゃなく、自分で毒を入れた。



幕引きは、兄らしく、潔く。



―父上、すまなかったな。
俺も、そっちへ行くから。
今度は親孝行するよ。




弟が、生きていてよかった。




本当に、よかった。




「だから、泣くっ、な…」




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