月物語 ~黒き者たちの宴~
高官たちが、処分をどうのと言っていたとき、張湯が異変に気付いた。
兄の様子がおかしい。
毒が塗られていたという、器が目にとまった。
「獅子殿!
兄は、本当に毒を呑んでいないのですか!?」
「!!!」
獅子の色が変わり、医官を呼びよせる。
「蒙御史大夫を調べろ!」
―まさか…
誰もが、動けずにいた。
蒙易冶を見た医官が、諦めの色を示す。
「あっ、あっ、兄上?
兄上?」
張湯が医官を押しのけ、そっと兄を抱きかかえる。
「兄上…」
「だから、泣くっ、な…」
張湯は自分が泣いているということにすら気付いていなかった。
皆が彼の、彼の人生の結末を知る。
弟の腕の中で、兄の腕がぽとりと落ちた。
「―――――ぇ。
兄上えぇ!!!!」