月物語 ~黒き者たちの宴~
「“天”か…」
獅子がぽつりと呟いた。
結末を迎えた事件。
けれど、腑に落ちないことだらけだった。
『お前は、雉院に嵌められたんだ。
証拠として、弟を生かしていた。
祝融がいるから暫くは飲まず食わずでも生き延びられる…』
あのとき劉巾が感じたように、この場にいる全員も、この言葉に引っかかっていた。
張湯を生かせば、“兇手を差し向けた本人も捕まるのではないか”。
死んだはずの王。
“王が帰ってくる”という言葉の意味すら掴めない。
大量に飛んでいる蜻蛉を、大きすぎる目の網で必死に捕らようとしている気分だった。