月物語 ~黒き者たちの宴~
礼に山道を歩かせることを申しわけないと思っているのか、鰯は何度も後ろを振り返った。
「いや、そんな心配しなくても本当大丈夫だから。」
平気なのは本当らしい。
礼はじゃんじゃん歩いている。
―おそらくは赤国の王。
しかし、祝融様はどうしたのじゃ?
誠実なお方と聞くが。
入れ違い?
鰯の不安を余所に、礼は清々しい気分だった。
「マイナスイオンいっぱい!」とはしゃいでいる。
エアコンとは違う涼しさが、礼に癒やしを与えた。
何より変わった植物に虫、動物に興味深々だ。
「おっおい!」
「尻尾が縮むわー!」と、鰯は内心で毒づいた。
暫く歩くと、空が開けた場所に出た。