月物語 ~黒き者たちの宴~



礼は、その光景に絶句した。



水の中に、天にも届くほどの大樹が立っていた。



緑と水面がきらきらと輝く。



時が止まるような感覚さえ覚えた。



鳥の鳴く声だけが生を告げる。



入り組んだ赤い回路が、花を添えているようにも見えた。



「さぁ、こちらへ。」



少女の言葉に、身体だけが従う。



回廊を歩く間も、目が離せなかった。



「どうぞお入りください。」



礼は一つの部屋へ通された。


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