月物語 ~黒き者たちの宴~



「花梨たちの持て成しはどうじゃ。」



礼は慌てて立ち上がった。



「とっても美味しいです。」



「それはよかった。」



女は礼の正面に座ると、礼にも腰掛けるよう促した。



―あっ、鰯。



女の後ろから、黒い尻尾が見えた。



「何をしておる。
さっさと席に着かぬか。」



「はっ、はぁ。しかし…」



「つべこべ言わずにさっさとせい。」



鰯は遠慮がちに席に着いた。



鰯がテーブルから顔だけ出す姿は、少し奇妙で面白い。


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