月物語 ~黒き者たちの宴~
「改めて、わらわは黄国の長、武則天(ぶそくてん)と申す。
安寧秩序の地、黄国へようこそ。」
武則天は優しく微笑んだ。
「彼女は大丈夫」、礼の直感がそう告げる。
「私は、朝霧礼と申します。
この度は、お助けいただき、誠にありがとうございます。」
―私は、小説の中の主人公とは違う。
もっと賢く生きられる。
「れい殿か。
よい名じゃ。
どのような漢字を書く。」
「礼義の”礼”です。
こちらでも漢字が使われているのですか?」
「平仮名はないが、漢字はあるのう。」
武則天は軽快に笑った。