月物語 ~黒き者たちの宴~
言葉には不自由ない。
異世界で言葉がわかるというあの設定は、どうやら本当らしい。
漢字なら、新しい世界でも親しみを持てる。
「随分に肝の据わった女子よのう。-いや、王か。」
「いえ、そんな。」
と答えつつ、それは当たり前だと心で呟く。
「ですが、やはり、私は王なのですか?」
武則天は、ちらりと鰯を見る。
鰯は視線を感じてびくりと尻尾を震わした。
「礼殿、あなたは賢い。
だからお話申し上げる。
花梨、珊(さん)、海(うみ)、下がりなさい。
どこえゆく。
鰯、おぬしは残れ。」