月物語 ~黒き者たちの宴~



礼の額には美しい印が刻まれていた。



赤い鳥が、翼を丸く広げた姿だ。



もはや顔には目がいかない。



鳥の中心には宝玉が埋め込まれていた。



―不思議。



その宝玉は埋め込まれて見えるが、一切手に感触を与えなかった。



「それが王の印じゃ。
絶対に複製不可能。
礼殿、そなたは美しい王になる。」



礼は、鏡を伏せた。



美しいものは好きだ。



しかし、今の礼には不釣り合いな気がした。



顔が汚れているからに違いない。


< 44 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop