月物語 ~黒き者たちの宴~
礼の額には美しい印が刻まれていた。
赤い鳥が、翼を丸く広げた姿だ。
もはや顔には目がいかない。
鳥の中心には宝玉が埋め込まれていた。
―不思議。
その宝玉は埋め込まれて見えるが、一切手に感触を与えなかった。
「それが王の印じゃ。
絶対に複製不可能。
礼殿、そなたは美しい王になる。」
礼は、鏡を伏せた。
美しいものは好きだ。
しかし、今の礼には不釣り合いな気がした。
顔が汚れているからに違いない。