月物語 ~黒き者たちの宴~
「そなたを赤国へ、必ず送り届けよう。
国には王が必要じゃ。
民も臣下も、皆が待っておる。
だがの…」
―みんなが私を待っている。
その言葉に、心が満たされていくのを感じた。
これまでの焦燥感は、本来いるべき場所ではなかったからだと思った。
「…少々時間が必要じゃ。
王を送るなど前代未聞のこと。
慎重をきす。
じゃが、今日から新月に向うからの。
急がねばなるまい。」
―???
「月とこの世界は関係があるのですか?」
「おっとこれはすまぬ。
礼殿はこちらに来たばかりじゃったのう。
あまりにも落ち着かれているのでつい。
この世界は、月と共にあるのじゃ。
月が消えればよくない力が働く。
使う力も多く必要じゃ。」