月物語 ~黒き者たちの宴~
「なるほど。
で、“この世界”ということは、やはりここは日本、いえ、地球でもないということですね?」
武則天は、目を細めた。
―賢い、賢い。
「その通り。
まぁ、それより問題は、身体がないことじゃが。」
―??????
「えっ?
武則天様、それはどういうことですか!
かっかっ身体がないって…」
さすがの礼も、この発言には取り乱す。
一方鰯は、礼が武則天と呼んだことにぎょっとした。
鰯が何か言おうとしたが、武則天はそれを制して続ける。
「そなたは魂の存在だと聞いておろう。
そのままの意じゃ。
そなたには学ぶ時間も必要じゃろうて、暫くここにおるとよい。
送還と身体のことは、わらわが何とかしよう。」
武則天は、大したことではないというようにさらっと話を片づけた。
「そうじゃの。
七日。
七日のうちに準備を整える。
その間、ここでこちらの世界について学ぶと良い。
鰯、暫し仕事は休みじゃ。
礼殿に教鞭を執れ。
花梨、お前たちは次女としてお世話せよ。」
花梨がどこからともなく現れた。
「宜しくお願いします!」
またもやうっかり頭を下げてしまった礼に、武則天は柔らかく微笑んだ。