月物語 ~黒き者たちの宴~
「それを望んでおるのだろう?」
女は口角を上げて妖艶に笑った。
「ふむ。
確かに、今しかないかもしれぬ。」
期は、絶妙だ。
女は貪欲故に愚かと思われがちだが、実は強かという方が正しい。
男の望みを利用して、女の望みを叶える。
それをわかっていながら、男が断らないことも知っている。
「お引き受けいたそう。」
その言葉を聞くと、さっと踵を返した。
「そなたに、『花』を預ける。好きに使ってくれてかまわぬ。」
見向きもしないで、女は『花』を置いて去っていった。