月物語 ~黒き者たちの宴~
1章 泰然自若 ~異世界への導き篇~
―1―
冷やりとした風が心地よい季節。
日没は次第に早くなっている。
今日は歩いて帰ろう。
突如浮かんだ考えに、
礼(れい)は従った。
いつものことだ。
感のようなものに
突き動かされる。
それは、いつだって正しいと礼は考えていた。
―みんなもっと私を信じるべきだわ。
誰もわかってない。
本当は凄い人間なのに。
まぁ、あの人たちじゃ私を理解できないんでしょうけど。
大学の帰り道を、長い黒髪を揺らしながら歩いた。