月物語 ~黒き者たちの宴~



いつの間にか、もう一つの空に白い月が掛かっていた。



間もなく夜が来る。



二つの世界が入れ替わる時間だ。



礼は別に、急いで帰る必要はなかった。



大学入学と共に、一人暮らしを始めた。



いつ帰ろうが、誰も何も言わない。



礼は今の暮らしが気に入っている。



親兄弟でさえ、“本当の自分”をわかっていない。



そう思うと、いつもカッとなってしまう。



それらから解放された生活は居心地が良かった。



―私はみんなとは違う。
だから理解されないし、できないんだわ。
後で後悔したって、知らないんだから。




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