月物語 ~黒き者たちの宴~



カァー。



烏が鳴いた。



バサバサバサ。



道路を挟んだ水源池の方で、大きな羽音がした。



音のした方を見やると、フェンスの上に一羽の烏がとまっていた。



一瞬、烏と目があったような気がして、慌てて目を反らした。



獣が怖いわけではない。



吸い込まれそうな漆黒の球体に、酔うような感覚を覚えたのだ。



ガァー。



先ほどよりも深く鳴いた。



羽音と共に、視界の端で黒い物体を捉えた。




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