月物語 ~黒き者たちの宴~
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「さぁ、主上。
本日は州の特産品について勉強いたしましょう。」
痩せて、長い髭を生やした老人。
彼が礼の教育係である。
名を、東 苑(とう えん)という。
いつも柔らかく微笑んではいるが、勉学には滅法厳しい。
即位式の翌日から、みっちり仕込まれた。
それは礼にとって、ありがたいことでもあった。
勉学は苦でない。
王には必要だとも思う。
この赤宮についても同じだ。
知るべきことがたくさんある。