泣くなよ
「なあ、美野里」
呼び慣れた名を呼ぶと、今度は顔を上げた。うわ、汚ねえ顔。ガキの頃よく泣き顔見てたから、余りにもその頃と変わってなくてビビる。
とりあえず近くにあったティッシュの箱を手渡し、顔を逸らす。
「おまえ、大丈夫だったんじゃねえの?」
「………大丈夫だし」
「俺さ、俺なりに心配してたんだけど」
「…………」
「俺の前では無理しなくていいから」
頭を、今度は叩くんじゃなく、ゆっくり撫でる。髪の毛伸びたんだな、指に髪を絡ませ考える。
ちらりと顔を盗み見れば、…また泣いてるし。大きい目からボロボロ流れ落ちる水は、なんでか分からないけど俺の胸まで痛くした。
「…う、…あいつに、…新しい、彼女できた…」
「うん」
「信じ、…らんなくて、メールしたら、…もう連絡すんなって…」
「うん」
「………馬鹿みたい、だけど、…私まだあいつが、すきで、…」
「……うん」
頭を撫でていた手を今度は背中に移して、泣き過ぎて呼吸をするのが辛そうなのが、少しでも楽になるように、ぽんぽん叩く。
すき、なんて言葉すごく軽そうに聞こえるし、そう言うのも思うのも簡単。だけどこいつのすきには、沢山沢山想いが詰まってる気がして、
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