泣くなよ
ドアに向かう俺の腕に、美野里が思い切りしがみつく。
「ば、馬鹿!あんた馬鹿でしょ!」
「そんなクソ野郎すきになったおまえよりは馬鹿じゃねえよ」
「ふざけんな!」
うるせえ、とりあえずさっきまで泣いてた癖に余りにも美野里が煩いからまた床に座る。
頭を一発殴られてマジで腹が立つ。こいつふざけんな。
「だから、あいつに仕返ししてやるよ!俺が!」
「あ、あんたは私の話し聞いてくれるだけでいいから!」
「…………なんで」
「あんたには、関係ない話しだから」
関係ない話し?こいつ馬鹿じゃねえのか?とりあえず横にいた美野里の頭を叩いた。
「関係あっから」
「痛い!あるわけないでしょ!」
「おまえが泣くからだろ!!」
思ったよりでかい声が出て、美野里も黙る。だけど本当だ。
おまえが、泣くから。
「おまえを傷付ける奴は、俺が許さない」
「………」
「おまえを守るのは、今度からはあいつじゃねえ、俺だ」
美野里が泣くなら泣き止むまで隣に居る、笑うなら一緒に笑う、怒るなら隣で宥めるよ。だから、
「だから、そいつぶん殴って、これからは俺が隣に居る」
今度こそ立ち上がってドアを目指せば、ドンッと背中に重みが。
後ろを見れば、美野里が俺の背中にくっついてた。
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