泣くなよ
「達也」
名前を呼ばれて少し動揺した。呼ばれ慣れてるけど、なんだか心臓が握りしめられるような。
「…ありがとう」
「当たり前」
「…ごめんね」
「謝んな」
振り返って、美野里の顔を見れば、また泣き出して。あー、くそ。泣くなよ。
「汚ねえ顔」
「……うざい」
「泣き虫」
「……うざいって」
「…なんで、泣くんだよ」
問い掛けに、返ってきた答えに俺は思わず目を見開いた。俺がこいつを抱きしめるのに、時間は掛からなかった。
「隣に、居て」
俺の問い掛けに「嬉し泣き」なんて答えたこいつは、少しは吹っ切れたのか?とりあえず、元彼ぶん殴るのやめた。
彼氏じゃなくていい、恋人じゃなくていい、形はいらねえから。とりあえずこれから、腕の中で小さく泣くこいつのこと抱きしめるのも、もちろん隣に居るのも俺だけ。今はそれだけで充分だ。
2011/03/20…END