雨のち晴
「その言葉ずっと待ってた」
「言おうと思ってたんだけど。言えなくて、ごめん」
切ない。
すごく切ない。
本当はおめでとうメールも
作ったし、0時ジャストに
電話もしようと思った。
だけど送ったらどう思うのかな、とか、
通話中とかになってたらどうしよう、って。
そんなことを考えてたら、
1分、2分、3分って過ぎて。
結局今日まできてしまった。
「今言ってくれたから、許す」
限界だと思った。
こんなに想ってるのが、
限界だと思った。
「好きなの」
突然思い立った。
今言わなきゃ、
もう言えないって。
今伝えたら、
何か変わるかもって。
「十夜が好きなの」
「朱里」
変わって、お願い。
奇跡起こして、神様。
どうか、お願いだから。
せめて2番目でもいいから。
十夜の目に少しでもいいから、
映してほしい。
こんなに好きなの。
十夜が好きなの。
お願い…、だから…。
「ごめん」
だけど十夜の口から出たのは。
たった三文字の、ごめん。
「朱里、ごめん」
もう想うことは、
許されないんだ。
望んでもだめなんだ。
神様は、いないんだ。
「うん、分かってた」
虚勢を張る。
そうでもしなきゃ、
立ってられない。
「無理だって知ってたから」
笑って安心させたい。
自分のせいで、
あたしが傷付いてるって、
思わせたくない。
「里菜ちゃんいるのに、気持ち悪いねあたし」
「朱里」
「ごめん、本当。あたしどうかしてた」
怖い。
十夜を見るのが、
すっごく怖い。