雨のち晴
「十夜、お昼買いに行こ?」
「あ~、そうだな」
甘ったるい声で、
俺の名を呼ぶ。
俺は少し、気だるさを覚える。
「今日ね、お弁当忘れちゃって」
「ふーん、そっか」
里菜は、そんな俺に笑いかける。
俺はほぼ無視な感じで、
前だけを見続ける。
購買が近づいてくると。
「…えっ」
そう言って驚いている
姿が見えた。
「はい。…寝てました」
寝てたのか。
なんて、勝手に会話を盗み聞きして
心の中で笑う。
お前が寝てるとこ、
何回も見てるし。
俺は独り言を心の中で
唱えながら歩く。
俺はいつも、
心の中でしか
本音が言えない。