雨のち晴












何で走っているか、なんて


自分にも分からない。


だけど急がなきゃ、って


そう心で思ってて。







歩き慣れた廊下をひらすら走り、


教室を目指す。



みんないるなら、声が聞こえても


いいはずなんだけど…。





誰1人、声なんて聞こえない。







おかしいな…。







息が苦しくなるのを我慢して、


階段を登る。















教室に着くと、乱れる息を整え、


ドアを開けた。



すると目に飛び込んで来たのは、


がらんとした室内と


窓際に座っている十夜だけ。



…みんなは?






「丁度3分。早いな、お前」






早いな…って。


急げって言ったの


十夜じゃん。










「……みんな、は?」





「いないけど?」




「だって、さっき後お前だけ…って」






何よ、もう…。



ドアを閉めると、あたしは廊下側から


2番目の1番後ろの席に座った。


最近、運動してなかったから


未だ息が苦しい。








「今日は補習の手伝いだから。俺とお前、間違ってねぇだろ?」








なんだ、そういうこと。




〔あとお前だけだから。3分で走って来い〕




補習を手伝うのはあたしで。


自分はいるから、後いないのは


あたしだけ。


そう言いたかったのか。









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