雨のち晴





朱里は俺を少し見て。


石黒と中山を引っ張るように


連れ、去って行く。


俺はそれを見て。






「おい」





行くなと思った。


戻って来い。


そう思った。


だけど、朱里は俺の声を無視して、


すたすたと去って行く。


俺は1歩踏み出して、


だめだと足を止める。


俺が行ったら、


終わってしまう。


歯がゆい思いで、心がもやもや。


本当俺って、


情けねえ。






「十夜、パン買わないの?」





「あぁ、買う」





俺はさっき手を伸ばしたパンを、


おばちゃんに渡して代金を払う。


こんなのいつものことなのに、


何だかさっさと食う気になれなくて。





「あ、自販機寄るわ」





俺は目に入った自販機の前で立ち止まる。


あ、そういえばあいつ、


これ好きだったっけ。


そう思って俺は、


自分の飲み物を買うの忘れて、


違う物を買った。





「十夜がそれ買うのなんて、珍しいね」





そりゃそうだろ、こんな甘いの。


別に俺が飲むわけじゃねーし。


そんなことを思いながら。


里菜の言葉を右から左。


俺って本当、


性格悪いな。




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