雨のち晴
「ここはこうでしょ?」
あ~、なるほど。
「ね、十夜、見て?」
お前、その顔反則。
俺は心の中でそう言って。
うるせえな、と。
悪態を吐く。
素直じゃない俺は、
いつもこんな感じで。
だけどそれでも朱里は、
俺に笑いかける。
俺は朱里の笑った顔が好きで、
一緒にいるのが心地よくて。
「じゃ、出してくる」
「行ってらっしゃい」
夏休み最後の日。
こんな日まで、先生は俺に
補習させる。
もちろん朱里も一緒で。
今日は始まる時間が遅かったから、
終わる時間も遅く。
気が付けば夕方。
「失礼しました」
職員室を出て、小さくガッツポーズ。
補習が終わった。
夏休みが終わる。
いや、でも補習が終わった。
それがすごく嬉しくて。
「終わっ…」
いつも以上にテンション上げて、
教室に入ったら。
気持ち良さそうに寝てる
朱里がいて。
おい、嘘だろ。
まだ職員室言って15分だぞ。
15分て、長いか。
いやでも、寝れるか、普通。
おれはそんなことを考えながら、
朱里を揺する。