雨のち晴





「ちょっと来い」




俺は咲坂の手を引いて、


教室を出る。


少し歩いて思った。


あそこで否定すればよかった。


こんなことして、


周りから見たら。


お前内緒って言っただろ。


ごめん、つい。


的な風に見られても


おかしくねーんじゃね?


ていうか、そんなこと


この際どうでもよくて。






「何してくれてんの?」




本気で責める。


男だったら、胸ぐら掴む勢いで。


なのに、この女は。





「友だちにね、考えるって言われたって言ったら、勘違いしちゃって。あ、でも別にいいよね?考えてくれてたわけだし、ね?」





…どこまで勝手なんだよ。


こいつの計算に、


まんまとはめられた。


してやられた、俺。


てか、こいつの言葉の影響力


半端ねえな。


しかも俺、男の敵だってさ。


どんだけの野郎どもが、


咲坂に騙されてんだよ。







「俺はお前のこと好きじゃない」




はっきりそう言った。


言ってやった。


なのに、こいつは。






「知ってるよ?でも、きっとあたしのこと好きになる。させてみせるもん」





なんて、ほざきやがった。


もう、疲れたよ、俺。


何でこいつのために、


頭使わなきゃなんねーの。





「勝手にしろ」





どうせ時間が経ったら、


俺に飽きて。


他の男に行くだろう。


そう思って、


もうほっとくことにした。


教室に戻ると、


気になったのは朱里の様子で。


あんだけ騒いでたら、


絶対朱里も気付いてるはず。


休み時間、俺の元にやってきた朱里は。


なぜか切なそうに笑って、


おめでとうって。


そう言った。







< 120 / 281 >

この作品をシェア

pagetop