雨のち晴
「ちょっと来い」
俺は咲坂の手を引いて、
教室を出る。
少し歩いて思った。
あそこで否定すればよかった。
こんなことして、
周りから見たら。
お前内緒って言っただろ。
ごめん、つい。
的な風に見られても
おかしくねーんじゃね?
ていうか、そんなこと
この際どうでもよくて。
「何してくれてんの?」
本気で責める。
男だったら、胸ぐら掴む勢いで。
なのに、この女は。
「友だちにね、考えるって言われたって言ったら、勘違いしちゃって。あ、でも別にいいよね?考えてくれてたわけだし、ね?」
…どこまで勝手なんだよ。
こいつの計算に、
まんまとはめられた。
してやられた、俺。
てか、こいつの言葉の影響力
半端ねえな。
しかも俺、男の敵だってさ。
どんだけの野郎どもが、
咲坂に騙されてんだよ。
「俺はお前のこと好きじゃない」
はっきりそう言った。
言ってやった。
なのに、こいつは。
「知ってるよ?でも、きっとあたしのこと好きになる。させてみせるもん」
なんて、ほざきやがった。
もう、疲れたよ、俺。
何でこいつのために、
頭使わなきゃなんねーの。
「勝手にしろ」
どうせ時間が経ったら、
俺に飽きて。
他の男に行くだろう。
そう思って、
もうほっとくことにした。
教室に戻ると、
気になったのは朱里の様子で。
あんだけ騒いでたら、
絶対朱里も気付いてるはず。
休み時間、俺の元にやってきた朱里は。
なぜか切なそうに笑って、
おめでとうって。
そう言った。