雨のち晴





それから何か月か経った頃。


俺はやっぱり、


咲坂のことを好きになれなくて


限界だと感じた俺は。


無理だと伝えた。


この数か月間、好きになろうと


したけど無理だって。


俺はやっぱり想えないって。


そしたら、この女。





「別れるって言うなら、あたし高原さんに何するか分かんないから」





こんなことをほざく。


どこまでも腐ってる、この女。


しかも俺に執着する意味。


分かんねえ。





「それに、本気なんだから!」





誰もいない空き教室で。


咲坂はまたギラギラのカッターを、


鞄から取り出して。


自分の腕に当てた。





「やめろって」





一応、俺も人間な手前、


そこらへんはやめさせようと


する意欲はある。


だけど、もう限界。






「十夜くん、キスして…?」




なのに、こいつはお構いなしに。


頬を染めてそんなことを言う。


訳分かんねえ。


何で嫌いだって言われてんのに、


そこまで出来んの、お前。


普通に引くし。






「しないから」





そう言ったら。


咲坂は、俺の目の前で。


カッターをスライドさせた。


うわ、まじでやったよ。


俺は冷静にそう思ってたけど。


やっぱ人間の血が流れてるから。


反射で、咲坂の腕を押えに行く。


傷は本当浅くて、


紙で切ったくらい。


だけど範囲が広いから、


出る血も多くて。






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